糖尿病とは

糖尿病の診察をする川口 隆作の写真

糖尿病は、血糖いわゆる血液中に含まれるブドウ糖の濃度が基準とされる数値(血糖値)よりも高い状態にあることを言います。

そもそもブドウ糖とは、食事を摂取したことで得られる栄養素のことで、これが血液中に入ると細胞に取り込まれ、それによって脳や体を動かすためのエネルギー源となるものです。
そのエネルギー源として活用されるには、膵臓で作られるインスリンというホルモンが分泌されることが不可欠なわけですが、何らかの原因によってこれが分泌されない、分泌量が不足している、量は十分でも効きが悪いとなると、ブドウ糖は細胞に取り込まれずに血液中で残ったまま(ダブつく)になります。

血糖値に関しては、健康な方であっても食事をする、糖分を多く含むジュースを飲むなどすれば上昇するようになります。
ただその際にインスリンが分泌されることで、血糖値は元の状態に戻っていきます。
ただインスリンの分泌に何らかの不具合があれば、ブドウ糖は細胞に取り込まれなくなるので、血糖値を下げるのは困難になって、(血糖値は)高い状態のまま維持されるようになります。
これが糖尿病発症のメカニズムです。

ちなみにインスリンの機能低下(作用不足)の原因の多くは、不摂生な生活によるところが大きいのですが、膵臓が強い人であれば、それに対する影響はないとされています。
ただ日本人の大半は膵臓が強くないので、基本的にインスリンを出す力は弱いと言われています。

糖尿病の種類

このインスリンの働きが十分でなくなる原因(糖尿病の種類)というのは、大きく以下の4つがあると言われています。

1型糖尿病

インスリンを作成する膵臓のβ細胞が何らかの原因(自己免疫反応 など)によって破壊されてしまい、インスリンがほとんど分泌されていない状態になっています。
この場合、速やかにインスリンを体内に補充する必要があります。

2型糖尿病

日本人の全糖尿病患者様の95%程度を占めるとされるタイプです。
これは、主に日頃の生活習慣の乱れ(過食、運動不足、多量の飲酒、喫煙、ストレス など)や肥満によって、膵臓が疲弊してしまい、インスリンの分泌量が低下、あるいは量が十分でも効きが悪い状態(インスリン抵抗性)になってしまう糖尿病になります。

二次性糖尿病

主に内分泌疾患(甲状腺機能亢進症、クッシング症候群 等)、膵疾患(膵炎 等)、肝疾患(肝炎、肝硬変 等)などの病気や薬剤(ステロイドの副作用 等)の使用などによって、血糖値が上昇し、それによって発症する糖尿病のことを言います。

妊娠糖尿病

女性は妊娠すると血糖値が上昇しやすくなるという特徴があります。
この場合、完全に糖尿病を発症しているわけではなく、出産後に血糖値の数値は元に戻っていきます。
ただ一度この診断を受けると、将来的に糖尿病を発症するリスクが高くなります。

糖尿病の症状

主な症状ですが、発症し始めの頃というのは、自覚症状が現れないことがほとんどです。
それでも病状がある程度まで進行すると、異常な喉の渇き、多飲(水などをたくさん飲む)、おしっこがたくさん出る(多尿)などの症状や、全身の倦怠感、食欲はあるものの体重が減少するといったことがみられるようになります。
なお上記の症状に心当たりがあれば、かなり病状が進行していることでもありますので、速やかに医療機関をご受診されるようにしてください。

それでも放置を続けるとやがて血管障害が起きるようになります。
この場合、細小血管で障害が起きやすいのですが、これらが集中している網膜、腎臓、末梢神経で合併症を招きやすくなります。
ちなみに糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害は糖尿病三大合併症と呼ばれています。
また太い血管では動脈硬化を促進させてしまうので、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や脳血管障害(脳梗塞 等)など重篤な合併症を引き起こすリスクも高くなります。

糖尿病の治療法
(2型糖尿病治療の場合)

糖尿病の治療の目的は、血糖値を正常な範囲の数値に留め、合併症のリスクを防ぐことにあります。
そのためには、まず日頃の生活習慣の見直しが大切です。
具体的には、食事面(食事療法)と運動です。
これらのみでは改善が困難という場合は、併せて薬物療法も行っていきます。

糖尿病合併症について

糖尿病は自覚症状がみられない病気で病状を進行させやすいという特徴があります。
つまりそれ自体は怖い病気というわけではないのですが、同疾患を放置することで発症する別の病気(合併症)によって、生命に影響が及ぶ、あるいは取返しのつかない状態となってしまいます。
そのため、血糖値の上昇に気づいたら合併症を発症させないための治療が必要になるのです。

糖尿病は、血管内でブドウ糖がダブつくことで血糖値が上昇して発症するようになりますが、血管は全身に張り巡らされていて、太い血管もあれば細小血管もあります。
この場合、細い血管で血管障害が起きやすくなって、太い血管では動脈硬化を招きやすくします。
それに伴って起きるとされる糖尿病合併症というのは、以下のようなものがあります。

細小血管障害によって起きる
糖尿病合併症

細小血管の血管障害ですが、これらが集中している網膜、腎臓、末梢神経で発症しやすいとされ、これら3つの合併症を糖尿病三大合併症と言います。

糖尿病網膜症
糖尿病網膜症とは

糖尿病による高血糖状態が持続し、それによる細小血管障害によって網膜の血管が詰まるなどして損傷し、さらに脆弱な新生血管などの発生によって、網膜内に血液成分が漏れる、出血がみられている状態を糖尿病網膜症と言います。
主な症状ですが、黄斑部と呼ばれる網膜の中心までに病変が達しない限り自覚症状は出にくいと言われています。
ただある程度進行すると、かすみ目、飛蚊症、視力低下、視野障害などがみられ、さらに放置が続けば失明することもあるので要注意です。

なお同疾患は糖尿病を発症したからすぐ起きるということはありません。
糖尿病に罹患してから発症するまでに10年程度は要すると言われています。
ただ、糖尿病をいつから発症したかが明確に判明することはないので、糖尿病と診断された場合は目に異常がなかったとしても定期的に眼科検診を受けられるようにしてください。

治療について

糖尿病網膜症は、病状の進み具合によって3つのタイプ(初期、中期、進行期)に分け、それぞれに応じた治療を行っていきます。
病状の進行が初期の場合、これを単純網膜症と言います。
網膜に浮腫や出血(点状)を確認することはできますが、自覚症状は、ほぼありません。
この状態であれば、糖尿病治療による血糖コントロールのみで十分です。ただ定期的に眼科で検査はします。

また病状が中期まで進行している場合を増殖前網膜症と言います。
この場合の血管は虚血状態となっています。
それでも眼症状は黄斑に病変が及ばないとみられないとされていますが、閉塞した血管に変わって新たな血管が作られる兆候がある場合は、光凝固療法(レーザー治療)で新生血管を焼き潰していきます。

最も病状が進んでいる状態であれば増殖網膜症と診断されます。
この場合は網膜や硝子体にまで新生血管は伸びていき、これらで出血も起きるなどして様々な眼症状がみられるようになります。
治療法としては、光凝固療法(レーザー治療)や出血によって濁った硝子体を取り除くなどの硝子体手術を行っていきます。

糖尿病腎症
糖尿病腎症とは

腎臓は血液をろ過して尿を作るという役割をする臓器です。
腎臓には細かい血管がたくさん存在するのですが、糖尿病を発症し、高血糖な状態を放置したままにすると、次第に毛細血管が集中している糸球体と呼ばれる組織(血液をろ過し、老廃物は尿として排出させる働きをする)の機能が低下するようになります。
すると体にとって必要とされるたんぱく質なども排出されてしまう、あるいは尿が作りにくくなって老廃物が排出されなくなるなどします。
さらに病状が進めば、腎不全となって透析治療が必要となってしまうケースもある怖い病気です。
ちなみに糖尿病に罹患してから腎症を併発するまでは、10~20年の期間を要するとも言われています。

主な症状ですが、発症初期の段階では自覚症状がみられることはありません。
なお同疾患は病気の進行状態を1~5期に分類していますが、自覚症状が現れるのは3期以降とされ、むくみ、皮膚のかゆみ、食欲不振、体がだるいなどの症状がみられます。
また3期で尿中に蛋白尿が含まれていることが確認され、4期で腎機能の低下を血液検査などで調べられるようになります。
なお5期につきましては透析療法が必要な状態です。

治療について

腎臓を元の状態にするという治療法は現時点ではありません。
この場合、これ以上の進行を抑制するのが目的となります。
したがって、血糖をコントロールするための治療をしっかり行っていきます。
また高血圧が伴っているのであれば、降圧剤も使用していきます。
また腎不全の状態であれば、低たんぱく食や塩分や脂質を抑えるなどの食制限、透析治療などを検討します。
末期の腎不全であれば、透析治療か腎移植をする必要があります。

糖尿病神経障害
糖尿病神経障害とは

神経細胞というのは毛細血管から酸素や栄養を供給されているわけですが、糖尿病の発症によって高血糖状態になると毛細血管は損傷を受け、それによって神経細胞も障害を受けるようになって、様々な症状が起きるようになります。
この状態を糖尿病神経障害と言います。

具体的には、自律神経、感覚神経、脳神経などが障害を受けるようになります。
自律神経障害としては、立ちくらみ(起立性低血圧)、便通異常(下痢、便秘)、排尿障害、発汗の異常、勃起障害、顔面麻痺などがあります。
また感覚神経障害として、両足先から左右対称で起きるとされるしびれ・痛み、冷え(足の後に両手の先でもみられる)のほか、足の感覚が鈍る、こむら返りなどがみられます。
このほか脳神経障害によって眼球運動障害が起きることもあります。

このような症状が長く続けば、生活の質(QOL:quality of life)を著しく下げるほか、心臓の神経に障害が起きることがあれば不整脈によって、突然死を招くという可能性もあります。

治療について

最も大事なのは、血糖値の数値を適切とされる範囲にしっかりコントロールしていくことです(糖尿病の治療が基本です)。
また飲酒や喫煙は病状を進行させることにもつながるので、禁煙、禁酒にも努めるようにします。
また足の感覚がなくなっているとケガなどに気づかなくなるので、常に足の様子を観察し、早めに異常に対処し、手入れをしていくフットケアも怠らないようにします。
なお手足のしびれや痛みが強ければ、それらの症状を緩和させる薬物療法も行っていきます。

太い血管で起きる糖尿病合併症

糖尿病は血管を損傷させる病気です。
そのため太い血管でもダメージを受けます。
主に動脈硬化を発症させやすくするのですが、それをきっかけに併発する重篤な合併症には以下のような疾患があります。

狭心症、心筋梗塞
狭心症、心筋梗塞とは

心臓の筋肉(心筋)に血液を送る血管のことを冠動脈と言います。
この冠動脈に動脈硬化が起き、それによって血管内が狭窄する(コレステロール等が付着)などして、血液の流れが悪くなります。
それによって心筋に十分な酸素などが供給されなくなることで、胸痛や胸が締め付けられるような症状がみられるのが狭心症です。

また、その狭窄している冠動脈に血栓が詰まるなどして、それより先の心筋に全く血液が行き届かなくなる状態を心筋梗塞と言います。
この場合、心筋が障害を受けて壊死していき、大半が急性の心筋梗塞を発症します。
主な症状ですが、(壊死の)範囲が拡大することで、激しい胸痛、呼吸困難、血圧低下、意識障害などが起きるほか、死に至ることもあります。

狭心症と心筋梗塞は、二つをまとめて虚血性心疾患と呼ばれることもあります。
また発症のきっかけとなる動脈硬化を招く原因は、糖尿病だけでなく、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病や喫煙も挙げられます。
そのため血糖値だけでなく、血圧やLDLコレステロール値などもしっかりコントロールしていく必要があります。

脳梗塞
脳梗塞とは

脳梗塞とは、脳内にある血管が何らかの原因で詰まってしまうことで、それより先の部分に血液が行き届かなくなることで脳の組織が壊死する状態を言います。
主な症状は片方の手足の麻痺やしびれ、呂律が回らない、ふらつくといったものですが、詰まりを起こしている部分が大きいと意識障害が起きることもあります。
患者様によっては、寝たきりになる、死亡するということもあります。

脳の血管に詰まりを起こすきっかけとなるのが動脈硬化ですが、その引き金となるのが、虚血性心疾患と同様に、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病や喫煙と言われています。

末梢動脈疾患
末梢動脈疾患とは

閉塞性動脈硬化症とも呼ばれる疾患で、主に動脈硬化によって足の血管に血が通わない状態となってしまい、それによって様々な症状がみられるようになります。
動脈硬化の原因については、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病や喫煙などが挙げられます。
50歳を過ぎた男性の患者様が多いのも特徴です。

よくみられる症状は、足や手などにしびれや痛み、冷えなどを感じるといったものです。
また足先の些細な傷や水虫などがなかなか治りにくいということもあります。
このほか、比較的早い時期から間欠性跛行(歩き続けるとしびれや痛みが出て歩けなくなるが、休むとまた歩けるようになる。これが繰り返される)がみられます。
さらに病状が悪化し、それでも何も治療をしない状態を続ける血流が悪化している部分が壊死することもあります。

1型糖尿病

1型糖尿病とは

インスリンは膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞から分泌されているのですが、この細胞が主に免疫機能の異常による自己免疫疾患によって破壊され、インスリンがほぼ分泌されないまま高血糖状態になる糖尿病のことを1型糖尿病と言います。
この場合、不足しているインスリンを体内に補充していくインスリン治療をしていくことになります。

なお1型糖尿病は、インスリンが減少していく程度によって、大きく3つのタイプに分類されます。
それぞれの特徴は次の通りです。

劇症1型糖尿病
劇症1型糖尿病とは

膵臓のβ細胞が破壊されると同時に急激にインスリンの分泌が低下してしまうタイプです。
この場合、1週間程度でインスリンが分泌されない状態となって、重篤な急性合併症である糖尿病性ケトアシドーシス(呼吸困難、腹痛、嘔吐、意識障害、昏睡などの症状が現れる)を引き起こすようになります。

なお劇症1型糖尿病は、何の前触れもなく血糖が上昇し、腹痛やはっきりわかる全身倦怠感などがみられるので、診断を着ける際はよく似た症状が出るとされる急性膵炎や腸炎との鑑別が必要となります。

治療に関しては、糖尿病性ケトアシドーシスの状態であれば、脱水症状も起きているので水分を補う点滴とインスリンの投与(普段の使用とは異なる量)が行われます。上記のような急性期の治療は入院する必要がありますが、その後症状が落ち着いて慢性期になった場合は、他の1型糖尿病患者様と同じインスリン療法となります。

急性発症1型糖尿病
急性発症1型糖尿病とは

1型糖尿病患者様の中で最も多いタイプとされ、膵臓のβ細胞の破壊が始まってから数ヵ月程度経過した後にインスリンの分泌が低下するようになります。
それによって、高血糖状態の特徴でもある、口の異常な渇き、多飲・多尿、全身の倦怠感、体重の減少などの症状がみられるようになります。

診断については、主に血液検査による自己抗体の測定をし、陽性の結果が出た、もしくはインスリンの分泌量が足りないと判定されるなどすると1型糖尿病と判定されます。
治療に関しては、体内で不足しているインスリンを自己注射で適切に補充していくインスリン療法になります。

緩徐進行1型糖尿病
緩徐進行1型糖尿病とは

インスリンの分泌が低下していく進行の程度というのが非常にゆっくり進むタイプです。
早期に緩徐進行1型糖尿病に気づくことができ、早めにインスリン治療をしていくことができれば、分泌機能の低下という状態をさらに遅らせることも可能です。
なお、この病状の進行状態というのは、2型糖尿病とも間違われやすく、経口血糖降下薬による薬物療法をされている患者様で、血糖コントロールが上手くいかない場合は、この緩徐進行1型糖尿病である可能性も考えられます。

治療に関しては、急性発症1型糖尿病と同様に基本はインスリン療法となりますが、投与する量や1日の注射回数を減らすことができる場合もあります。

2型糖尿病

2型糖尿病とは

日本人の全糖尿病患者様の95%程度を占めるとされるタイプです。
2型糖尿病は、主にインスリンの分泌量が低下、あるいはインスリンの量が十分でも効きにくい(インスリン抵抗性)などの遺伝的因子に加え、日頃の生活習慣の乱れ(過食、運動不足、多量の飲酒、喫煙、ストレス など)や肥満によって、膵臓が疲弊してしまい、発症してしまう糖尿病になります。

2型糖尿病の治療について

糖尿病の治療の目的は、血糖値を正常な範囲の数値に留め、合併症のリスクを防ぐことにあります。
そのためには、まず日頃の生活習慣の見直しが大切です。具体的には、食事面(食事療法)と運動です。
これらのみでは改善が困難という場合は、併せて薬物療法も行っていきます。

食事療法とは

食事療法と言いましても、何か特別なことをするわけではありません。
人は食べ過ぎるとその分だけインスリンを分泌させることになるので、それだけ膵臓に負担をかけることになります。
この負担を減らすには、適正なエネルギー量を摂取する(食べ過ぎない)、また栄養バランスがとれた食事を心がけるといったことが重要です。
ただいきなり食生活を変えるとしても何から手をつければよいかわからないという患者様も多いかと思われます。
そのような場合、当院には管理栄養士も在籍しておりますので、栄養バランスや適正なエネルギー摂取についての指導を受けることもできます(栄養指導)。
詳細につきましては、お気軽にご相談ください。

運動療法とは

糖尿病の患者様には肥満の方も多いかと思われます。
この肥満というのは、インスリンの効きを悪くさせる特徴もあるので、できるだけ解消する必要があります。
その際に最も効果的なのが運動療法です。
また運動には、血糖値を低下させる、インスリンの働きを改善させる効果もありますので、速やかに取り入れるようにします。

運動内容に関してですが、十分に酸素を取り込みながら全身の筋肉を使う有酸素運動を行います。
具体的には、ウォーキング、ジョギング、自転車、水泳などです。
運動強度については、ハードなものは必要なく、ややきつい(汗ばむ)程度で充分です。
軽いジョギングであれば1回30分程度になりますが、できるだけ毎日のルーティンにするのが望ましいです。
なお運動量や内容については、一度医師に相談することをお勧めします。

薬物療法について
自己注射の写真

2型糖尿病の患者様で生活習慣の改善だけでは、血糖コントロールが難しいという場合に併行して薬物療法が行われます。
この場合、経口血糖降下薬が用いられますが、患者様の状態などによって医師から処方される薬の種類は異なります。
この経口血糖降下薬でも血糖値が目標まで下がらないという場合は、インスリン注射などの注射療法が行われます。

経口血糖降下薬の種類

スルホニル尿素(SU)薬
インスリンの分泌を促進させやすくする効果があります。低血糖を起こすこともあります。
グリニド薬
インスリンの分泌を促進させる薬です。スルホニル尿素薬よりも効果は弱いものの、低血糖のリスクは低いです。
DPP-4阻害薬
これもインスリンの分泌を促進させる効果がありますが、血糖値に応じて分泌量が調整されるようになるので、低血糖状態ではインスリンは分泌されません。
今のところ、経口血糖降下薬として多くの糖尿病患者様に用いられている薬でもあります。
ビグアナイド薬
肥満でインスリンの効きが悪いとされる2型糖尿病患者様に有効とされていますが、瘦せ型の方に対しても血糖値を改善させる効果はあります。
SGLT2阻害薬
糖を尿中に排出することで血糖値を下げる薬になります。尿の回数と量が増え、脱水症状がみられることもあります。
α-グルコシダーゼ阻害(α-GI)薬
軽度の2型糖尿病患者様に使用されることが多く、食後高血糖の症状が出やすい場合に使用されます。
チアゾリジン薬
インスリン抵抗性による高血糖な患者様に使用されます。

注射薬

インスリン製剤
インスリン製剤による注射療法は、1型糖尿病患者様であれば、診断された時点で速やかに行われる体外からインスリンを補充していく治療法です。一方、2型糖尿病の患者様で使用されるケースというのは、経口血糖降下薬では血糖をコントロールするのが難しいと医師に判断された場合に用いられます。
注射回数についてですが、よく知られているのは1日4回打つとされるインスリン頻回注射(三食の食事前に3回と就寝前の1回)です。その際は自己注射で、注射部位は腕、腹、太ももなどですが、ただ1回ごとに部位を変えることはせず、前回の部位から2~3cm離れた場所に打つという形になります。ちなみに注射針は非常に細く短いので、痛みはあまり感じません。
なお、インスリン注射に移行したとしても再び経口血糖降下薬に戻ることはできます。
GLP-1受容体作動薬
この注射療法は、インスリンの分泌量が少ない、あるいは効きが悪いとされる2型糖尿病患者様に用いられる注射療法です。これはGLP-1と呼ばれる食後に腸管から分泌されるホルモンを体外から補うというものです。同ホルモンを注入すると食事をした際など(高血糖状態)にインスリンの分泌を促進させる働きをするようになります。そうでない場合はインスリンの分泌が促進されることはありません。そのため低血糖のリスクは避けられます。
注射頻度に関しては、1日1~2回打つ薬剤もあれば、週1回の注射で済むものもあります。インスリンと同じように自己注射が可能です。
さらにこの薬剤には、食欲を抑制する働きもあるので、体重減少にも効果があるとしています。